勤め先の副業の規則と個人開発|モデル就業規則・届出・公務員の兼業・確定申告
副業・兼業の規則は、勤め先の労働契約や就業規則などに定められています。厚生労働省のモデル就業規則では、勤務時間外に他の会社等の業務に従事できるとしたうえで、労務提供上の支障・企業秘密の漏洩・名誉や信用を損なう行為・競業の4つの場合に、届出にもとづいて禁止または制限できる形になっています。
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勤め先の副業の規則を確かめる場所
副業・兼業の規則は、勤め先の労働契約や就業規則などに定められています。
副業・兼業には、企業に雇用される形で行うもののほか、自分で起業して行うものなど、いくつもの形があります。
副業・兼業の取り組みについての問い合わせ先は、事業場の所在地を管轄する都道府県労働局と労働基準監督署です。
モデル就業規則の副業・兼業の条文
厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)は、第14章に副業・兼業の規定例を置いています。第70条の2つの項の中身は次のとおりです。
- 労働者は、勤務時間外に、他の会社等の業務に従事することができます。
- 会社は、労働者からのその業務に従事する旨の届出にもとづき、その業務に従事することで次のいずれかに当たる場合には、これを禁止または制限することができます。
- ① 労務提供上の支障がある場合
- ② 企業秘密が漏洩する場合
- ③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
- ④ 競業により、企業の利益を害する場合
この規定例でいう「副業・兼業」には、他の会社等に雇用される形のほか、事業主となって行うものや、請負・委託・準委任契約で行うものも含まれます。労働契約にあたるかは、実態にもとづいて判断されます。
モデル就業規則は規程の例で、実際の就業規則の内容は、それぞれの事業場の実態に合わせて定めるものです。副業・兼業について相談や自己申告をしたことを理由に、不利益な取扱いをすることはできません。
副業・兼業を制限できる場合と裁判例
副業・兼業に関する裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように使うかは、基本的には労働者の自由とされています。企業が副業・兼業を禁止または制限できるのは、例として次の場合です。
- 労務提供上の支障がある場合
- 業務上の秘密が漏洩する場合
- 競業により自社の利益が害される場合
- 自社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
このうち労務提供上の支障には、副業・兼業が原因で自社の業務が十分に行えない場合や、長時間労働など健康に影響が出るおそれがある場合が含まれます。
労働者は、使用者の業務上の秘密を守る義務(秘密保持義務)を負っています。在職中は、使用者と競合する業務を行わない義務(競業避止義務)を負っていると解されています。このほか、使用者の名誉・信用を傷つけないなど、誠実に行動することが求められます(誠実義務)。
就業規則で副業・兼業に許可などの手続きを求め、その違反を懲戒の理由にしている場合について、裁判例では、形式的に就業規則の規定に触れても、職場の秩序に影響せず、使用者への労務の提供に支障を生じさせない程度・態様のものは禁止違反に当たらないとし、懲戒処分を認めていません。
モデル就業規則の解説には、副業・兼業に関する裁判例として次の6件が載っています。
- 都タクシー事件(広島地裁決定 昭和59年12月18日):隔日勤務のタクシー運転手が、非番の日に会社に無断で輸出車の移送や船積みなどのアルバイトをした事例で、就業規則で禁止された兼業に当たるとされました。
- マンナ運輸事件(京都地判 平成24年7月13日):運送会社が準社員のアルバイトの許可申請を4度にわたって不許可にした事例で、後の2回には不許可の理由が無いとされ、慰謝料の請求が一部認められました。
- 東京都私立大学教授事件(東京地判 平成20年12月5日):教授が許可を得ずに語学学校の講師などをし、講義を休講したことを理由とする懲戒解雇について、副業は夜間や休日に行われていて本業への支障は認められないとして、解雇が無効とされました。
- 十和田運輸事件(東京地判 平成13年6月5日):運送会社の運転手が年に1、2回の貨物運送のアルバイトをしたことを理由とする解雇について、職務専念義務の違反や信頼関係の破壊とまではいえないとして、解雇が無効とされました。
- 小川建設事件(東京地決 昭和57年11月19日):毎日6時間にわたるキャバレーでの無断就労を理由とする解雇について、兼業は深夜に及び余暇利用のアルバイトの域を超えるもので、会社への労務の誠実な提供に何らかの支障を来す蓋然性が高いとして、解雇が有効とされました。
- 橋元運輸事件(名古屋地判 昭和47年4月28日):会社の管理職にある従業員が、直接経営には関与していないものの競業他社の取締役に就任したことは懲戒解雇事由に当たるとして、解雇が有効とされました。
届出の様式例に並ぶ項目
モデル就業規則の第70条では、副業・兼業は労働者からの届出にもとづいて把握する形になっています。厚生労働省の「副業・兼業に関する届出様式例」には、次の項目が並んでいます。
- 副業・兼業の形態:「雇用」か「非雇用」かを選びます。非雇用のときは業務の内容を書きます。
- 事業所の名称と住所(雇用のとき)
- その事業所の事業内容と、従事する業務内容(雇用のとき)
- 労働契約を結んだ日と契約期間(雇用のとき)
- 所定労働日・所定労働時間・始業と終業の時刻、所定外労働時間の見込み(雇用のとき)
- 確認事項:1〜5に変更があったときは速やかに届け出ること、会社の求めがあったときは改めて届け出ること、必要に応じて実労働時間を報告するなど、労務管理に必要な情報の提供に協力すること
雇われない副業と労働時間の通算
労働基準法第38条第1項により、労働時間は、事業場を異にする場合(事業主を異にする場合を含む)も通算されます。副業・兼業を行う場合、企業は、労働者からの申告などで把握した他社での労働時間と自社での労働時間を通算して管理します。
労働基準法が適用されない場合は、その時間は通算されません。例として、フリーランス・独立・起業・共同経営・アドバイザー・コンサルタント・顧問・理事・監事などが挙がっています。
厚生労働省は、本業と副業・兼業の労働時間や健康状態を労働者が自分で管理するためのアプリ「マルチジョブ健康管理ツール」を出しています。
公務員の兼業の制限
国家公務員法と地方公務員法には、兼業を制限する条文があります。どちらの法律でも「営利企業」は、商業・工業・金融業その他営利を目的とする私企業を指します。
国家公務員法
- 第103条第1項:職員は、営利企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員・顧問・評議員の職を兼ねること、または自ら営利企業を営むことができません。
- 第103条第2項:人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出によって人事院の承認を得た場合には、第1項は適用されません。
- 第104条:報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員・顧問・評議員の職を兼ねるとき、そのほかどのような事業に従事し、事務を行うときにも、内閣総理大臣と所轄庁の長の許可が要ります。
地方公務員法
- 第38条第1項:職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員などの地位を兼ねること、自ら営利企業を営むこと、報酬を得てどのような事業や事務にも従事することができません。ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員などを除く)には、この制限はかかりません。
- 第38条第2項:人事委員会は、人事委員会規則で、任命権者の許可の基準を定めることができます。
自分の兼業が許可・承認の対象になるかと、その手続きは、国家公務員は所轄庁、地方公務員は任命権者で確かめてください。
副業の所得と確定申告
大部分の給与所得者は、勤め先が行う年末調整で所得税の額が確定し、納税も終わるため、確定申告は要りません。給与所得者でも確定申告をしなければならない人(確定申告をすれば税金が還付される人は除きます)の条件は7つあり、そのうち給与所得と退職所得を除く各種の所得金額で決まるのは次の2つです(令和8年4月1日現在の法令等による)。
- 給与を1か所から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合に、給与所得と退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円を超える人
- 給与を2か所以上から受けていて、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合に、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与所得と退職所得を除く各種の所得金額との合計額が20万円を超える人
- 給与の収入金額の合計額から、所得控除の合計額(雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除を除く)を差し引いた金額が150万円以下で、さらに給与所得と退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円以下の人は、申告は不要です。
自分の場合に確定申告が要るかは、税務署などの国税の相談先で確かめてください。
情報源
- 厚生労働省 — 副業・兼業の促進に関するガイドライン(令和4年7月改定)https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000962665.pdf確認日 2026-09-25
- 厚生労働省 — モデル就業規則(令和7年12月版・第70条 副業・兼業)https://www.mhlw.go.jp/content/001620507.pdf確認日 2026-09-25
- 厚生労働省 — 副業・兼業に関する届出様式例https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000692924.docx確認日 2026-09-25
- 厚生労働省 — 副業・兼業の促進に関するガイドラインのリーフレット(労働者の皆さまへ)https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000996736.pdf確認日 2026-09-25
- e-Gov 法令検索 — 国家公務員法(第103条・第104条)https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000120確認日 2026-09-25
- e-Gov 法令検索 — 地方公務員法(第38条)https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000261確認日 2026-09-25
- 国税庁 — No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm確認日 2026-09-25