Steam のビルドは SteamPipe で上げる|デポとブランチはどう分かれるのか
ビルドは SteamPipe で上げます。ファイルは約1MBのかたまりに分けられ、圧縮と暗号化のうえで配信網にアップロードされ、更新のときは理想的には、変わった部分のかたまりだけが利用者に配られます。
アプリの下にある単位
Steam では、1つの製品を「アプリ」という単位で扱います。アプリにはたいていストアページ・コミュニティハブ・利用者のライブラリの項目があり、App ID という固有の番号が付きます。1つの製品が複数のアプリにまたがることは、ふつうはありません。
新しいアプリは、Steamworks のパートナーグループの管理者なら誰でも作れます。登録料を払うか、アプリクレジットを付与されたあと、Steamworks の最初の画面の「Create new app...」から作ります。
アプリの種類は、App Admin の General Application Settings(アプリケーション設定(一般))で選びます。ゲーム(VR のタイトルも VR でないタイトルも含みます)、ソフトウェア(オーディオ制作、デザインとイラスト、写真編集などの製品)、DLC、体験版(Demo)です。DLC と体験版は、元のアプリとは別の App ID を持ち、元のアプリに結び付けられます。
アプリの下には、ほかにいくつかの単位があります。
デポの分け方と重なりの順番
デポには Depot ID という固有の番号が付きます。利用者がアプリを入れると、1つ以上のデポが手元の記憶装置に読み込まれます。
デポは App Admin の Depots のページで設定します。何も変えなければ、持っているすべてのデポが、一覧に並んでいる順で読み込まれます。あとから読み込まれたデポのファイルが、先に並んでいたデポの同じファイルを上書きします。つまり一覧のいちばん上のデポがいちばん弱い立場になります。順番は、項目をつかんで動かすと変えられます。デポの名前は自由で、読み込みの順番には関わりません。
Depots のページでは、4つの条件を設定できます。
Depots のページで設定できる条件
| 条件 | 設定したときの動き |
|---|---|
| 言語 | そのデポの中身は、その言語で Steam を動かしている利用者にだけダウンロードされます。どの言語で Steam を動かしている利用者にも使えるようにしたい中身には、初期値の「すべての言語」を使います |
| OS | そのデポは、指定したOSのシステムでだけ読み込まれます |
| アーキテクチャ | 指定が要るのは、32ビットと64ビットでそれぞれ別のデポがある場合だけです。デポが1つだけの場合は、初期値の「すべてのアーキテクチャ」のままにします |
| DLC | 初期の状態では、DLC のデポと中身は元のゲームの App ID の下で管理されます。DLC のデポを数多く出す場合は、**Manage DLC depots separately** を有効にすると、DLC のデポは DLC 自身の App ID の下で別に管理され、アップロードされます |
複数のOSに対応するアプリでは、OS ごとの中身をそれぞれ別のデポに入れます。例えば Windows と Linux にネイティブに対応するアプリなら、Windows 専用のファイルは Windows 専用と印を付けたデポに、Linux 専用のファイルは Linux 専用と印を付けたデポに入れ、共通のファイルは、Windows と Linux の両方、またはすべてのOS用と印を付けたデポに入れられます。
内容を共有する2つのアプリがある場合、片方のアプリのデポをもう片方に含められます。Steamworks 設定の SteamPipe から Depots を開き、Add Shared Depot でデポを選びます。選ぶ共有デポの元のアプリで、Steamworks のデータを変える権限が要ります。共有したデポは、元のアプリの言語・OS・アーキテクチャ・DLC の設定を引き継ぎます。共有デポは、現在も開発の途中です。まだ発売していないアプリのデポは、現在は共有できません。
SteamPipe がファイルを扱う仕組み
ビルドの登録には SteamPipe を使います。SteamPipe は、それぞれのファイルをおよそ1MBのかたまりに分けます。かたまりはひとつずつ圧縮され、暗号化されてから Steam の配信の仕組みにアップロードされます。利用者がダウンロードするまで、かたまりは圧縮と暗号化がかかったままで、利用者の手元で復号と展開が行われ、必要な場所に置かれます。
すでにあるゲームの更新を処理するときは、前のビルドと一致するかたまりを探します。こうすることで、理想的には、ファイルのうち新しくなった部分や書き換わった部分だけが「新しいかたまり」になり、利用者はその部分だけをダウンロードして更新できます。
SteamPipe には、次のような特徴があります。公開と非公開のベータのブランチを持てること、Web の画面から新しいビルドの公開と前のビルドへの巻き戻しができること、公開する前に更新の大きさを見られること、複数のアプリで内容を共有できること、公開の内容やベータの内容からインストール用のディスクを作れること、更新のダウンロードを始めたあとでも、ゲームやアプリをオフラインで使えること、内容が常に暗号化されていて有効でない版が利用者から見えないこと、そして開発中に使える SteamPipe のローカル配信サーバーがあることです。
ビルドの手順そのものは、Steamworks SDK の中のコマンド行のツールで進みます。SDK の tools フォルダーの ContentBuilder には、steamcmd を置く builder(Linux 用・macOS 用の steamcmd を置くフォルダーもあります)、ゲームの中身を置く content、ビルドの記録・かたまりのキャッシュ・中間の出力を置く output、組み立ての手順を書いた台本を置く scripts があります。Windows では、設定ファイルの作成とビルドのアップロードを助ける画面のツール SteamPipeGUI も、同じ tools フォルダーに入っています。
組み立ての台本では、AppID と DepotID、内容の置き場所、出力の置き場所、そしてどのファイルをデポのどこに置くかを書きます。台本を steamcmd に渡すと、ファイルの一覧が作られ、それぞれがかたまりに分けられ、新しいかたまりが圧縮・暗号化されてアップロードされ、デポごとに固有の番号を持つマニフェスト(デポに含まれるファイルの一覧と、大きさ・SHA1ハッシュ・印などの情報)が作られます。すべてのデポの処理が終わると、そのビルドに全体の BuildID が割り当てられます。
ビルドを上げるための Steam アカウントと権限
ビルドを作る前に、Steamworks のアカウントの中にEdit App Metadata(アプリのメタデータの編集)とPublish App Changes To Steam(アプリの変更を Steam に公開)の権限を持つ Steam アカウントが要ります。Steamworks のアカウントの管理者なら誰でも、Steam アカウントを加えて、必要な権限を与えられます。
発売済みのアプリのビルドを出す場合、そのアカウントには電話番号か Steam のモバイルアプリのどちらかが結び付いている必要があります。どちらかを使って、その操作を確かめる形です。またそのアカウントで電子メールや電話番号などの安全に関わる設定を変えた場合は、発売済みのアプリのビルドを出せるようになるまで3日待つ必要があります。乗っ取られたアカウントが発売済みのビルドを触れないようにするための決まりです。
ブランチ(ベータ)の作り方
ブランチは App Admin の Builds のページで管理します。Create new app branchから作り、空白を含まない分かる名前を付けます。この名前と説明が、利用者がベータの一覧から選ぶときに見えるものになります。パスワードを設定した場合、利用者はパスワードを入れるまでその名前を含めて何も見られません。
利用者の側では、ライブラリでゲームを右クリックして「プロパティ」を開き、左側の Game Versions & Betas のタブから選びます。選んだ時点で、Steam クライアントはそのブランチの内容を取得しはじめ、いま入っているものを置き換えます。既定以外のブランチを選んでいるあいだは、遊ぶボタンの隣にそれを示す表示が出ます。
既定(Default)のブランチは、利用者に配られる版です。発売前は、テストする人が初期の状態で取得する版でもあります。発売後は、既定のブランチの内容がそのまま利用者に届きます。
ビルドをアップロードするときに、既定のブランチへ自動で公開することはできません。App Admin で手作業で公開する必要があります。すでに発売しているゲームでビルドを公開すると、そのゲームを持っている人全員がその更新を受け取ります。
ブランチの内容を人に見せたくない場合は、ビルドをそのブランチに公開する前にパスワードを設定します。パスワードは、ビルドの Update から入れます。
ゲームの側から Steam に頼んで、利用者を特定のベータのブランチに切り替えることもできます。ISteamApps の GetCurrentBetaName・GetNumBetas・GetBetaInfo・SetActiveBeta がその仕組みです。
上げたビルドを審査に出す手順はSteam の審査は何を見て、発売までに何営業日かかるのかに、発売後の更新の出し方はSteam で発売したあと、更新はどうやって利用者に届けるのかにまとめています。
情報源
- Steamworks — Applications(アプリの種類と、下にある単位)https://partner.steamgames.com/doc/store/application確認日 2026-10-15
- Steamworks — Depots(デポの条件と読み込みの順番・共有)https://partner.steamgames.com/doc/store/application/depots確認日 2026-10-15
- Steamworks — Uploading to Steam(SteamPipe の仕組みと組み立ての手順)https://partner.steamgames.com/doc/sdk/uploading確認日 2026-10-15
- Steamworks — Builds(ビルドとマニフェスト・既定のブランチの確認)https://partner.steamgames.com/doc/store/application/builds確認日 2026-10-15
- Steamworks — Branches (Betas)(ブランチの作り方と選び方)https://partner.steamgames.com/doc/store/application/branches確認日 2026-10-15