イラスト・BGMの外注|取引条件の明示9項目と著作権の譲渡
フリーランス法では、発注事業者がフリーランスに業務委託をしたら、取引条件を、直ちに書面または電磁的方法(メール、SNSのメッセージ等)で明示する義務があり、口頭での明示は認められていません。著作物の創作を依頼して報酬を払っても、原則として著作権まで譲渡されるものではなく、譲渡を希望するときは契約書に明記する必要があります。
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この法律の対象になる取引
この法律でのフリーランスは、業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しないものです。一般にフリーランスと呼ばれる人には、従業員を使用している人や消費者を相手に取引をしている人が含まれる場合もありますが、この法律のフリーランスには当たりません。
写真撮影の例では、企業が宣材写真の撮影を、フリーランスとして働く従業員なしのカメラマンに委託する取引が対象です。消費者が家族写真の撮影を委託する取引は事業者からの委託ではなく、フリーランスが自作の写真集をネットで販売する場合は売買であって委託ではないため、どちらも対象外です。
発注事業者や業務委託期間で、義務の内容が変わります。従業員を使用していない発注事業者の義務は、書面などによる取引条件の明示だけです。従業員を使用している発注事業者には、取引条件の明示・報酬支払期日の設定・期日内の支払い・募集情報の的確表示・ハラスメント対策に関する体制整備の義務があり、業務委託の期間が1か月以上なら7つの禁止行為が、6か月以上なら育児介護等と業務の両立に対する配慮と中途解除等の事前予告・理由開示が加わります。公正取引委員会の特設サイトには、対応が必要な義務項目の番号を確かめる確認チャートがあります。
明示する9つの事項
明示は、直ちに、書面または電磁的方法(メール、SNSのメッセージ等)で行います。どちらにするかは発注事業者が選べます。口頭での明示は認められません。明示する事項は9つで、次のとおりです。「—」の欄は、その欄に当たる字が無い欄です。
取引条件として明示する9つの事項
| 番号 | 明示する事項 | 明示が要る場合 |
|---|---|---|
| ① | 給付の内容 | — |
| ② | 報酬の額 | — |
| ③ | 支払期日 | — |
| ④ | 業務委託事業者・フリーランスの名称 | — |
| ⑤ | 業務委託をした日 | — |
| ⑥ | 給付を受領する日/役務の提供を受ける日 | — |
| ⑦ | 給付を受領する場所/役務の提供を受ける場所 | — |
| ⑧ | 検査完了日 | 検査をする場合 |
| ⑨ | 報酬の支払方法に関して必要な事項 | 現金以外の方法で報酬を支払う場合 |
利用許諾と著作権の譲渡
著作物を使うための契約は大きく二つに分かれます。使うことへの了解を得る利用許諾契約と、著作権そのものを譲り受ける著作権譲渡契約です。
利用許諾契約と著作権譲渡契約の違い
| 契約 | できること | 契約に書くこと |
|---|---|---|
| 利用許諾契約 | 契約で決めた利用方法・条件の枠の中で使えます。枠の外の使い方はできません。許諾を受けた側は著作権者ではないため、第三者が無断で使っても、自分から差し止めなどを求めることは原則としてできません。 | 独占的に利用したい場合は、その旨を規定する必要があります。規定がなければ、原則として非独占の利用許諾契約になります。許諾を受けた側が第三者にも利用の了解を与える必要がある場合は、その旨を契約書に規定しておくことが必要です。ライセンス料を払う場合は、金額(消費税込みか抜きかを明確にする必要があります)・支払方法・支払時期などを明記する必要があります。 |
| 著作権譲渡契約 | 譲受人が著作権者になるため、譲受人は自分で使うことも、他人に使うことを認めることも、侵害への差し止めを求めることも、再譲渡することもできます。反対に譲渡人は、たとえ著作者でも、譲受人の了解なしには使えなくなり、似た作品を作ることに制約が出ることも考えられます。 | 創作を依頼して報酬を払い、納品を受けただけでは、原則として著作権まで譲渡されません。譲渡を希望するときは契約書への明記が必要です。著作権は全部でも一部でも譲渡できる(第61条第1項)ため、どこまで譲渡するかを明確にする必要があります。二次的著作物に関する権利(二次的著作物を創作する権利と、二次的著作物を利用する権利)は、譲渡の目的として特に明記されていないと、譲渡の対象ではないと推定されます(第61条第2項)。第27条(翻訳権、翻案権等)と第28条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)の権利も譲渡する場合は、その旨を契約書に明記する必要があります。著作者人格権は譲渡できません。 |
複製(コピー)の了解を得ただけではホームページへのアップロードはできず、アップロードには自動公衆送信についての別の了解が要ります。音楽の演奏の了解だけでは録音・録画もできず、録音・録画には複製についての別の了解が要ります。著作権法には「使用権」や「利用権」という名前の権利はありません。
配布されている素材に付くライセンスの表示は、ゲームに入れるライセンス表記の書き方にあります。
頼むときの手順
頼んでから払うまでを、利用許諾と譲渡の分かれ道を含めて図にします。
頼む内容から、支払いまで
- 頼む内容(給付の内容)と、頼んだものをどんな利用方法で使うかを書き出します。利用許諾では、契約で決めた利用方法や条件の範囲内でしか使えません。
- 利用許諾と著作権の譲渡のそれぞれで、できることと契約に書くことを、上の表で確かめます。譲渡を含める場合は、譲渡する範囲と、第27条・第28条の権利を含めるかどうかが、契約書に明記する対象になります。
- 9つの事項を、直ちに書面または電磁的方法(メール、SNSのメッセージ等)で示します。口頭での明示は認められません。
- 従業員を使用している発注事業者は、支払期日を、発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内のできる限り短い期間内で決めます。
- 一度決めた期日までに支払います。
支払期日・禁止行為・予告の決まり
元委託者から受けた業務を発注事業者がフリーランスに再委託した場合は、条件を満たせば、元の委託業務の支払期日から数えて30日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定められます(再委託の例外)。
従業員を使用している発注事業者がフリーランスに1か月以上の業務を委託した場合は、次の7つの行為が禁止されています。受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直しです。
受領拒否・報酬の減額・返品・不当な給付内容の変更・やり直しは、フリーランスの責めに帰すべき理由がないのに行うことが対象です。納期を延期して受け取らない、一部分だけ受け取る、発注時に定めた金額から名目を問わず差し引く、取引先の事情で不要になったとして返品する、発注を取り消してそれまでの作業分の費用などを払わない、といったことも当たります。買いたたきは、類似品等の価格または市価に比べて著しく低い報酬を不当に定めることで、一方的に○%減などと単価を下げて報酬を決めることも当たります。購入・利用強制は、正当な理由がないにもかかわらず、指定する物・役務を強制的に購入・利用させることです。不当な経済上の利益の提供要請は、金銭や労務の提供等をさせることで、たとえば運送のみを委託しているのに、委託していない倉庫整理もついでにやってもらうことが当たります。不当な給付内容の変更・やり直しは、費用を負担せずに注文内容を変更するか、受領後にやり直しをさせることです。
従業員を使用している発注事業者は、6か月以上の業務を委託している場合、フリーランスから申出があれば、育児や介護などと業務を両立できるよう、必要な配慮をしなければなりません。6か月未満の業務を委託している場合も、配慮するよう努めなければなりません。また、6か月以上の業務を委託している場合に、契約を解除するときや更新しないときは、少なくとも30日前までに、①書面②ファクシミリ③電子メール等による方法で予告しなければなりません。予告のあと契約が満了するまでの間にフリーランスが解除の理由を請求した場合は、同様の方法で遅滞なく開示しなければなりません。ほかに、募集情報の的確表示と、ハラスメント対策に関する体制整備の義務があります。
違反した場合、発注事業者は行政の調査を受け、指導・助言のほか、必要な措置をとるよう勧告されることがあります。勧告に従わなければ命令と企業名の公表があり、命令にも従わなければ罰金が科されます。
施行日・担当・相談先
フリーランス法は、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」です。施行日は令和6年11月1日です。
取引の適正化に係る規定は主に公正取引委員会と中小企業庁が、就業環境の整備に係る規定は主に厚生労働省が、それぞれ執行を担います。取引条件の明示・報酬の支払期日・禁止行為は公正取引委員会・中小企業庁の担当で、募集情報の的確表示・育児介護等への配慮・ハラスメント対策・中途解除等の予告は厚生労働省の担当です。
契約上・仕事上のトラブルについては、フリーランス・トラブル110番があります。令和2年11月から運営されている相談先で、フリーランス・個人事業主が弁護士に無料で相談できます。電話番号は0120-532-110です。
作品を公募で集めるとき
公募で作品を集める場合も、採用作品の著作権は、原始的には入選者に帰属します。主催者が自分への移転を希望するなら、募集要項にその旨を明記する必要があります。キャラクターデザインの立体化や標語の翻訳などが予定されている場合は、第27条と第28条の権利を含めて移転する旨も明記する必要があります。移転を希望しない場合は、入選者から主催者への利用許諾の規定が必要になります。主催者だけで使いたいときは独占的利用許諾契約を結ぶ必要があり、主催者は契約で定めた利用方法や条件の範囲内でしか使えないため、募集要項に利用目的を漏れなく記載する必要があります。主催者に著作権が移ったあとでも、入選者は著作者人格権(同一性保持権)を持っています。
著作権と商標権・意匠権は全く別の権利です。ゲームの題名の商標はゲームのタイトルを商標登録する手順にあります。
報酬を払うときの源泉徴収
源泉徴収が必要な報酬・料金等の範囲は、支払を受ける者が居住者か内国法人かによって変わります。居住者に払う場合の代表的な対象には、原稿料や講演料など、弁護士・公認会計士・司法書士等の特定の資格を持つ人などに払う報酬・料金、映画・演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)やテレビジョン放送等の出演等の報酬・料金などがあります。原稿料や講演料などのうち、懸賞応募作品等の入選者に払う賞金等には例外があり、一人に1回払う金額が50,000円以下なら、源泉徴収は不要です。
代表的なもの以外も含めた詳細は、国税庁の「源泉徴収のあらまし」にあります。
報酬・料金等の額に消費税および地方消費税の額(消費税等の額)が含まれている場合は、原則として、消費税等の額を含めた金額が源泉徴収の対象です。ただし、請求書等で報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されているなら、報酬・料金等の額だけを対象とする金額としてかまいません。この扱いは、インボイス制度の開始後も変わりません。売上側の国内の税は個人開発の売上と国内の税にあります。
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情報源
- 公正取引委員会 — 2024年公正取引委員会フリーランス法特設サイトhttps://www.jftc.go.jp/freelancelaw_2024/確認日 2026-10-22
- 文化庁 — 誰でもできる著作権契約マニュアル 第1章 1.(2)著作権に関する契約についてhttps://www.bunka.go.jp/chosakuken/keiyaku_manual/1_1_2.html確認日 2026-10-22
- 文化庁 — 誰でもできる著作権契約マニュアル 第2章 5.(2)募集要項の内容https://www.bunka.go.jp/chosakuken/keiyaku_manual/2_5_2.html確認日 2026-10-22
- 福岡労働局 — フリーランス・事業者間取引適正化等法https://jsite.mhlw.go.jp/fukuoka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/koyou_kintou/freelance.html確認日 2026-10-22
- 国税庁 — No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とはhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2792.htm確認日 2026-10-22